YAMAHA R1-Z (3XC-1 1990年式)

R1-Zは、ヤマハが1990年に発売した、2ストロークエンジンを搭載したネイキッドバイクである。
環境保護対応で衰退傾向にある2ストロークエンジンを、特徴的なスタイルの車体に収めた。
その機動力とデザインの良さがファンを広めたのか、三度に渡ってマイナーチェンジが行われ、99年まで発売された。
同一車種で9年間、継続販売されたのだから、そこそこのロングセラー車両である。

また、ヤマハの中型クラスで最後まで2ストロークエンジンを搭載した車種でもある(サーキット用など公道走行不可な車種を除く)

私も、そんなスタイルと、2ストエンジンの「未知の領域」に惹かれ、2017年についに購入した。
環境規制で2ストエンジン搭載車は近い将来、登録が出来なくなる可能性が高い」という(本当かどうか判らない)情報も購入を後押しした。

 

■はじめて本格的に触れた2ストエンジン車

私の初めてのバイクはジョグZ2だが、これが2ストエンジン車両であった。
そこからはシグナス、VTR、MC19と4ストローク車に移行したため、2ストを味わったのはジョグのみだった。
(過去に、友人の友人が乗っていたアプリリアのRS125を試乗したこともあったが、ポジションが非常にツラかった以外は殆ど覚えていない)

正直、加速性能は、4ストロークでも十分であった。
今乗っている400Xも、スロットルを捻ればグイッと良い加速をするので、加速に不満がある訳ではなかった。
しかし、2ストロークの加速は、4ストロークのそれとは次元が違うと皆、言う。
それが本当なのか、長年確かめたかった。

元々、R1-Zに惹かれたのはデザインである。
クロスしたパイプフレームと、丸みはあるが直線的なタンク、そして右側に2連並んだチャンバー。
ディバージョンやジールの「柔らかな感じ」とはまた違った、ヤマハ独特のスタイルが良い。
90年代のヤマハのバイクのデザインは、クルマでいうと日産・シルビアのような美的感覚がある。

 

 

私が購入したR1-Zは、以下の3つの改造点がある。

・セパレートハンドルがバーハンドルに。
・ステップがバックステップ。
・塗装がグレー一色に塗り直し。

バックステップのせいで、膝元は非常に窮屈である。
また、シートの堅さが中途半端に柔らかい。
この2点が合わさって、乗り心地は非常に悪い。座って30分も経つと尻(正確には尻の穴)が痛くなる。
ただし、上体はバーハンになっているので楽。何とも微妙な乗車姿勢になっている。
とにかく、ステップだけは標準に戻したいところである。

 

■「経験したことのない加速」

さて、R1-Zの本題であるエンジンである。
RZではなくTZRの血を引くR1-Zのエンジンだが、RZもTZRも乗ったことがないのでどう違うのかは知らない。
ただ、はっきり言えることは、

「4ストロークとは別物の、化け物のような加速をする」ということだ。
ほぼネットの触れ込み通りである。

走行距離40800キロも走り込み、2ストエンジンとしては寿命に近いが、OHはされているという。
車両価格が安い個体を選んだので、 正直2ストの雰囲気だけでも味わえれば御の字、と思っていたが、甘かった。

このバイクは、まずクラッチが合せづらい。
誤ってスロットルを多めに捻ってしまうと、急発進する危険があるため、慣れるまでは慎重にいくべきだ。
初速のエンジン回転数とクラッチを繋いだときの大まかな挙動は以下の通り。

〜3000rpm 一般的な加速
4000〜5000rpm 4ストロークの強めの加速
5500〜6500rpm 急加速(4ストロークとは異なる、瞬間的な加速)
7000〜8000rpm 強烈なGが加わり、慣れていないと制御が困難な加速
9000rpm〜 体制を整えないと転倒する危険がある力

 


▲メーター。エンジンの特性上、簡単にレッドゾーンに突入するが、焼き付きの原因になるので避けたい。

 


▲前照灯点灯時は橙色に発光する。

 

R1-Zは、2ストロークの車両の中では「大人しい」分類である。
YPVSという排気デバイスが付いた2スト後期の車両であるため、これよりもパワーを持った車種は沢山ある。
それでも、7000rpmより先は、4ストロークでは体感できない(排気量の大きいバイクなら体感可能…か)加速である。
まるで脳内物質が一気に溢れ出るような、官能的というか…とにかく言葉では形容しがたい
「なるほど、これが2ストロークの魅力か」と、つくづく実感させられる。

初日はバイク屋の京都から神戸まで約60キロの距離を走ったのだが、とにかく気を遣った。
どこで飛び出してカマを掘るだろうかと不安で堪らなかった。
いまでは、エンジン始動後の初速以外は、特に気を遣わなくても良くなった。
エンジンが温もれば2000rpmでもエンストしないため、街乗りも可能なトルクを有している。これはYPVSのおかげだろう。

兎に角…この加速に慣れると事故るか公安のお世話になるのは確実なので、気をつけて運転すべきだ。

 

■初期型の宿命か、それとも…

軽自動車にロケットエンジンを積んだようなもの、という形容がしっくりくるR1-Z。
しかし悲しいかな、車体の剛性がエンジンについて行けてないというのが、私のような素人でも判ってしまう。
サスペンションも同じで、経年もあるだろうがとにかくよく動く。ブレーキも難があると聞くが、この個体は今のところ問題ない。

2型以降は剛性問題が(ある程度)解決しているだけに、少し悔しいところはある。

ハンドリングは、この頃のヤマハの特徴が生かされている。27年前のバイクだが、ディバージョンやジールと同じく、非常に曲がりやすい

 

正直に言って、単に「速いバイク」を求めるなら、現行の大型バイクを買う方が絶対に良い。
操縦性や乗り心地は言うに及ばず、故障する可能性が絶対的に低いからだ。
R1-Zは、経年が経過しているだけでなく、不完全な2ストロークというデバイスなので、いつ故障してもおかしくない。
それでも、R1-Zに惹かれるのは、2ストローク特有の味というか、形の良さや雰囲気というか、そういう「匂い」を醸し出しているからだろう。
また、昔の全盛期に作られたバイクには、夢や希望といった「可能性」が、秘められていると感じる。
R1-Zにも、個人的にはそれが垣間見られるのだ。

 

 

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